水辺の境界
水辺の境界
執筆者:上林 竜也(M1)
人が集まる水辺について考える。
夕日が沈む波打ち際、真夏の河原でバーベキュー、山奥の秘境の滝、、、水は人々を自然と引き寄せる不思議な魅力を持っている。
先日、外部ゼミで音羽川砂防ダムを訪れた。みんなでエスキスする場所を求めて探索していると、自然と水の近くに体が引き寄せられ、最終的に瀑声が響く中洲のなかで集まることになった。大きな水落の音が鳴り響き、話し合う場としての音環境ではなかったものの、すぐそばに流れるせせらぎや水落の小さなしぶきがなんとなく心地よく、滞りなくエスキスが進められた。
このような人々を引き寄せる水辺の魅力とは一体何だろうか。
私は水陸境界の揺らぎがひとつの要因なのではないかと考える。水は流動性を帯びており、そのカタチは刻一刻と変化していると言える。河原や波打ち際をよく見てみると、その水陸境界線は一本にとどまることなく、水陸の領域は常に押し引きの状態になっていることがわかる。一方、あまり人々が集まってこない水盤や河川堤防には水陸境界線がしっかり線引きされている。そう考えると、魅力的な水辺環境には、水陸境界の曖昧さが秘められているのではないだろうか。
今日の建築というのは、土地の隣地境界線トラブルが絶えず、境界についてより厳しく取り締まっている現状ではあるが、だからこそ水のように自由に揺れ動く境界の可能性を追求していきたいと私は考える。