見上げる境界

見上げる境界

執筆者:村上幹太郎(B4)

建築に関わるようになってから、境界というものの難しさをよく実感していました。武井研究室に入ってからは、さらにその曖昧さや逆にはっきりした部分に悩まされます。しかし、その曖昧さや明確さに可能性があると考えるようになりました。
 
そんな境界について、今回は「見上げる境界」として話を進めていきたいと思います。
 
仕上げのない天井を見上げると、上階または屋根のスラブ、梁が見えていると思います。例えばその梁の梁せいが大きくなるとどうなるか。言わば、垂れ壁のようなものになるはずです。

4回生の使う製図室では、頭上に棚が設置されています(写真1)。天井を見上げた時にこの棚で境界線を感じます。しかし、席の配置が棚と一致しているかと言われると、怪しいところです。なので、境界を作る要素としてこの棚だけでは効力が低いという結論に至りました。

写真1

梁ほど大きなものではありませんが、暖簾も同様に境界を作る要素になると思います。京都では多くの店舗が暖簾を出入り口付近に出しています。扉と同じ位置にあるもの、少し手前に設置されているものがあり、その大きさも様々です。暖簾は日よけや目隠しとしての役割がありますが、境界としての効果を引き上げているとも思います。
 
過去訪れた建築で、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、衝撃を受けた建築として印象に残っています。今回のテーマを考えるきっかけになった建築といってもいいくらいです。

玉ねぎ型のグローブと呼ばれるもので読書や自習のスペースを作っています(写真2)。下にはカーペットやベンチ、本棚が配されているのですが、ここでの境界には、グローブがとても大きな効力を持っていると思いました。実際に中のベンチに座るとグローブによって包まれているような感覚を体験できました。

写真2

境界を作る要素には色々なものがあると思います。4回生の製図室のように、建具や家具、床の仕上げ材料など見下ろす要素の効果が大きいかもしれません。それでも、頭上からのアプローチで作られた境界には、独特の魅力があるように思います。

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