『類人猿とヒトから考える都市』
『類人猿とヒトから考える都市』
執筆者:塩坂 優太(M1)
人が生きる場所としての都市はどうあるべきか?という問いに対し、本書では生物学・生態学・人類学のアプローチから現代都市と共同体の危機と提案を取り上げています。
話し手である霊長類学者の山極壽一氏は、まず、類人猿と比べた場合のヒトの特性に柔軟な組織編成を掲げています。ヒトは家族と共同体という構成原理の違う組織の両立を、仕切りを建てた住居のプライバシーによって実現したと述べられています。
ところが、現代の「住」は個人が選択するものに近づいたため個人中心の環境が実現され、当初の集団規模を超えた都市での私生活が慣れきっていないヒトの身体に群衆を無視する術を身につけさせたと懸念されています。
ここでの問題に、個人の背後には直接的な付き合いだけが残り、人間性を阻害した関係が成立することが挙げられています。
本文でも書かれていたように、我々が教養や文化を身につけるためには多様性のある環境に触れ合う機会が必要なのではないかと考えました。説明のつかない神秘性や環境に身を置くことは、これまで出会ったことのない発見や学びを経て、個々の人間性を養うきっかけになるのはないでしょうか。
参考文献:建築雑誌 JABS|vol.123 No1704|2017.11 pp.6-9