『東洋的な見方』
『東洋的な見方』鈴木大拙 岩波文庫
執筆者:丸山 翔悠(B4)
今回は最近読んだ本というテーマだが、詳しく言えばここ数年の中でもっとも興味深い内容であった本と言えるかもしれない。
建築学を専攻している以上、建築家の思想や、プロセスに関する本は日常的に読むのだが、今回紹介する「東洋的な見方」という本は禅の思想についてである。これは禅思想家・鈴木大拙によるもので、西洋と東洋の考え方の差を主題に挙げている。
西洋と東洋を比較した際に、西洋は事物が2つに分かれていることを前提に思考を積み重ねる「二元性」であり、一方の東洋は事物が2つに分かれる前をみており、感受性に基づいた「一元性」であるとした。そのため西洋は科学的、分析的なものの考え方に適しており、産業革命に見られるような発展を成し遂げたのは確かに西洋であった。しかしその二元的な考えは対立や争いを生みやすいともしている。他方、一元性をもつ東洋の考えには、人々を融合させ、本来の意味で人間に自由をもたらす優れた世界観として「禅」があるとした。
この本の中でも何度か触れられているが、どちらかの考え方が優れていて、どちらかが劣っているという訳ではなく、論理性をもつ西洋的なものと感受性の東洋的なものどちらも大切だとしている。
しかし、近代以降急激に成長した日本の都市に話の焦点を移すと、全体として西洋的なものを感じるのは私だけだろうか。というのも、機能主義や合理主義に基づいて計画されたプランにおいて感受性をもちこむ隙間もないように思える。確かに、便利で合理的な生活は保証されているが人間は本来そこまで合理的ではないと思う。
本書では1960年代の時点で2つの考えを混在させた文化を作るべきだと掲げているが、今こそそれを実現しなければならないと強く思った。
最後は本書を読んでの私の感想となりかなり飛躍した部分があるのかもしれないが、我々東洋らしさというものの根源を知るという意味でこの本を読んでいただきたい。