『OVERLAP 空間の重なりと気配のデザイン』
『OVERLAP 空間の重なりと気配のデザイン』
執筆者:村上 幹太郎(B4)
題名を見た時すぐに、購入を決意していた。
そもそも自分が建築を学ぼうと思った理由、それをもう一度考え直している時にこの本を見つけた。
本書は、「空間の重なり」という現象に着目して、21世紀なりの建築と都市の新しい関係を提唱することを目的としたものである。人口の多くが都市に住んでいる今の時代、都市計画の分野では、コンパクトシティなどの取り組みがされているが、都市の構成要素である建築からは積極的な取り組みが見られなかったことを筆者の川添さんは問題意識されている。
そして、伝えたいことを
・近代建築は「空間」という概念を完成させたが、完結的で外部環境とは切り離された建築であった。
・日本のような都市では、厚みを持った境界空間として、都市と建築の空間を重ね合わせることが重要。
・この空間の重なりを繰り返すことで、多くの人が参加できる積み上げ式の都市デザインを行うことができ、都市と建築の関係が再構築される。
と3点にまとめている。(一部省略)
本書を通して、敷地いっぱいに建つ建物、狭い歩道、車基準の街区などに自らが建築を学ぶことにしたきっかけがあるのだろうと思った。そして、空間の重なりという川添さんの考え方に大きな共感を覚えた。
これまでの都市計画での取り組みが、都市の構成要素である建築に影響いていない。さらに、個人的には、都市の構成要素として道路に着目して考えたい。建築側で公開空地などがあるように、道路でも単に通過するのではなく人が滞留できる場が生まれている。しかし、建築と道路の関係はもっと連動したものになると感じている。空間の重なりにより都市と建築の関係を再構築するためには、(都市という言葉の定義にもよるが)建築と道路の関係を再構築することが不可欠ではないだろうか。
読み終えた時には、卒業制作に向けて自分が進むべきベクトルの向きが定まったような気がした。