地域の大きな庭
地域の大きな庭、鴨川公園
執筆者:田中希(M1)
私が好きな境界空間として挙げるのは、鴨川公園です。
京都を流れる有名な河川、鴨川。その名を聞くと、多くの人が三条大橋のあたりを思い浮かべるのではないでしょうか。私が特に好きなエリアは、そのさらに上流にある北大路橋付近の河川敷です。
同じ川の河川敷ですが、三条大橋付近とは雰囲気が異なります。まず、河川敷の幅が広く、芝生が敷かれています。また、利用する層も異なります。観光客というより地域の人々が犬の散歩やピクニックに訪れている様子を目にします。
私はそんな、地域の人たちが思い思いにそれぞれの時間を過ごしているのを眺めるのが大好きで、よく足を運びます。
京都の街は、中心部でなくとも所狭しと住宅や店舗が建ち並んでいますが、暮らしていて窮屈には感じません。その一つの理由が、この鴨川(賀茂川)の存在ではないかと思っています。
緑が豊かで美しく、圧倒的なスケールを持っているけれど、人が立ち入ることができ、散策することができ、水遊びをすることだってできる。豪雨が襲う時には水害から街をまもり、気候の良いときには憩いの場として人々を迎え入れる。
鴨川公園は、自然と街との間に位置する、おおらかで大きな庭なのではないかと感じざるを得ません。
街路樹や建築に取り入れられた植栽など、都市の中に設けられた自然は、細かく分散したものになりがちです。住宅などの地割りが細かくなるのに合わせて、自然はますます小さな粒になっていきます。
しかし、その一方でまとまった大きなスケールの自然が都市や住民に果たす役割はとても大きなものです。大きな自然を人々が使うことのできる場所として用意することで、街と自然とがより密接になり、豊かな都市にもつながるのではないかと考えています。
私はこれから建築に携わる一人として、誰でもやって来れる、いつでも空いている、おおらかな地域の庭を、都市に増やしていきたいと思っています。