見えない境界
見えない境界
執筆者:大橋海斗(M2)
境界空間ということばを聞いて何を思い浮かべるだろうか。
一般的には二つの事象の狭間の空間のことを指すと考えるだろう。
建築においては外部空間と内部空間、公共と私などが例としてある。
それらの境界部についてはどうだろうか。
分かりやすいものには境界部に間仕切り壁や建具が入っているものがあり、境界部分を物理的に遮断している。
境界を知覚させるものには鳥居やコーンなど、物理的には遮断していないが視覚情報として境界を感じさせるものがある。
見えないものには心理的な距離感、パーソナルスペースなどがある。
図面上で線を引く行為が建築において境界を作る行為に繋がると思うが、単に二項対立での空間を仕切るためだけではなく、人間の心理的距離間や身体的な距離感に落としこんでそれらをかたどるような境界空間を作る方法もあるのではないかと考える。
心理的距離感に注目するのであれば空間体験として知覚情報は大きな役割を担う。人と人の距離感においても人の立つ環境によって物理的には同じ距離でも時に近く、時に遠く感じる。
普段2Dで図面を引き、3Dでモデリングも行う中でリアルのマテリアルを見ずともソフトの中にあるマテリアルを切り貼りすることで疑似体験をすることが可能であるが、人の距離感を操る空間を考えるのであれば実際のマテリアルに触れ、見て、感じて、何によってその空間を構成することでより人の感覚に寄り添う建築ができあがるのではないか。
そのために知覚の集積を続けていきたい。