『ヘルシー家のおひさま日記』

『ヘルシー家のおひさま日記』

執筆者:中矢 晃輔(B3)

僕が幼い頃からずっと大好きな絵本。
本書は四季の移ろいと共にヘルシー家の1年を日記にした、歳時記のようなものである。

この本を捲ると、忘れがちで大切な感覚が思い出される。僕自身設計を進めてゆく中で、人がその場で営みを繰り広げるという事実の大切さを分かっていながらも、新規性や造形美に傾倒しなおざりになってしまうことが時にある。この絵本はそんな僕に心の癒しだけでなく、建築に精通してない人たちの純粋な感覚を伝えてくれる。春の花畑でレジャーシートを広げ、色を持ち出した季節を楽しむ姿、冬の家内で春を待つかのように皆で暖を取る姿、挿絵の1枚1枚が空気感としてしあわせの姿を漂わせてる。そして「ああこんな空間いいなぁ」と胸が高鳴る。

この絵本を読むと、作り手と暮らし手の視点とを、一辺倒になることなく両者行き来しながら創造すること、そして建築家とはそんなしあわせの場を物理的根拠を持って提供することのできる偉大な職能なのだということを思い出し、気持ちを高め、再び設計に向かわせてくれる。

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