部屋未満のいえ / House less than Room

第15回エイブル空間デザインコンペティション グランプリ
第62回ミラノサローネ国際家具見本市 出展
制作者:川崎蓮
用途:賃貸集合住宅

私はワンルームの「手に負える感じ」が好きだ。どこにいても全体を把握できる一体感、人体寸法に近いスケールの親近感。その一方で、戸建住宅等がもつ部屋ごとの領域性が生活にメリハリを生んでいることもまた確かである。双方の魅力が共生する新しいワンルームの質を目指した。私たちが生活の「機能」と呼んでいるものは、モノとその周りに人のための余白があって初めて成立する。本提案では小さな余白を部屋の内側に集めて、他方を厚みのある壁に収めている。すると、中心にもう1つの部屋が生まれた。ここはすべての生活機能が半分ずつ押し寄せて混ざり合う、つかみどころのない「場」である。ワンルームに内と外という概念が芽生え、中心の余白は住み手によって自由に使われ方を変化させる中庭のような存在となる。ここでのふるまいはすべての生活機能にはたらきかけ、個性の表象としてこのいえが完成するだろう。部屋未満のスケールに焦点をあてた究極のワンルームである。