汀線の泊まり / Nodules on the shoreline

京都工芸繊維大学 卒業制作
松ヶ崎賞(最優秀賞)
審査員特別賞ノミネート

制作者:塩坂優太
用途 :宿泊施設
期間 :2023.4-2024.1


兵庫県たつの市御津町に位置する室津は、三方を山に囲まれた港町である。かつて、海陸を乗り換える来訪者は汀線に架けられた桟橋から本陣に宿泊し、漁師は雁木から帆船をすり抜けて出漁していた。明治以降、海陸の交通を結び終えた集落は、日本の食卓を支える水産の町として発展してきている。一方で、住処と生産拠点の棲み分けや都市間交通網の進展に伴って、生産地の側面をもつ室津は消費者の暮らしから非日常の存在となり、職業や年代の異なる村人同士の交流に綻びを抱えつつある。近年、室津の漁港施設は初期整備から60年を迎えた。競り場の建て替えが考えられる中で、競をしない養殖業への転換や飽和する漁港内での建て替えが課題となっている。これらの状況に対し、日の出と共に競りが始まる漁港施設を日中に交通や観光、飲食で栄える姿が垣間見える集落に取り入れ、それらと重ね合わせることで施設稼働率を高めるとともに、漁業に興味を抱いた漁業体験者のための宿泊所を設計する。また、一年を通して季節の収穫物を調理してゆく加工場を設計する。かつて集落がもっていた賑やかな汀線と開かれた生産場の姿を取り戻すことを目標とした。