隣の芝も青い/Our grass is greener everywhere.

京都工芸繊維大学 修了制作
本野精吾賞学内最優秀賞)
長坂常賞

制作者:川崎蓮
用途 :集合住宅 街区インフラ
期間 :2023.11-2024.1

地域コミュニティ形成のために私が建築家としてできること、それはあるまとまりの中に住民の共有財産を生むことだと思う。人体スケールでは接続よりむしろ分断の性格が強い今日の道路をふまえて、共有財産の可能性を京都のオーバースケールな街区に見出している。現代京都の典型的な開発に伴う敷地合筆によるアメーバ状敷地に対して、その「枝」部分に4棟の集合住宅を設計する。これは1敷地に1つの建蔽率が定められる現行の建築基準法に対して、非建ぺい部分を集めてあるまとまりのある外部領域を創出する手段であり、基準法と相性の悪い京都の街区構造を継承するためのアイデアである。
中央の空地は公開空地として、地下には生活のためのインフラと各棟が備える機能を機能たらしめる「無目的」的空間が広がる。空間と機能が切り離された「絵馬堂的状態」を設計することで、街区の中庭は都市の新たなコンテクストとなって空間を還元し始める。古の都として目まぐるしい変化を遂げてきた京都が歴史の硬直状態から解き放たれるために、唯一不変であった120mという街区のスケールに可能性を見出し、迫りくる開発や生活形態の変化すべてを肯定した上で明日の一歩を踏み出すための計画である。